今回のオンラインセミナーは、期間限定配信(2023年7月31日〜8月28日)で実施致しました。
本記事では、セミナーの内容について簡単にご紹介致します。「時間外労働の上限規制」について、法令違反事例や対応事例を交えながら社労士の藤澤氏にご解説いただきました。
詳しくはセミナーアーカイブ動画を是非ご覧ください。
登壇者紹介
藤澤真由紀(ふじさわまゆき)※写真右 みらいコンサルティンググループ 社会保険労務士 / コンサルティング 社会保険労務士資格取得後、労働社会保険に関する手続きを中心に社会保険労務士としての実務経験を積む。 現在は規模や業種を問わず幅広く企業からの労務相談に応じ、社内規定の整備や株式上場時の労務管理(IPO支援)にかかるプロジェクト等も担当している。 |
「時間外労働の上限規制」に関するセミナーの内容
①働き方改革関連法の沿革
少子高齢化によって働き手の確保が難しくなっていることや、テレワークや副業・介護をしながら働く必要があるなど、働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することが今後の日本の課題になっています。
課題解決のため、以下の2つの観点から法改正を行うことで「働き方改革」が進められてきたことについてご解説いただきました。
①労働時間法制の見直し
働き過ぎを防ぐことで、働く人々の健康を守り、多様な 「ワーク・ライフ・バランス」を実現できるようにしていく。
②雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
同一企業内における正社員と非正規社員の間にある不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても「納得」できるようにしていく。
① ②の取り組みにより、企業側が生産性を上げ長時間労働を無くすことで、以下のような好循環が生まれます。
②働き方改革の必要性
令和3年度に法違反となった事業所のうち、違反全体の41.5%が「労働時間」と「割増賃金」に関する違反となっているため、リスクヘッジの観点からも対応する必要性が高い内容になっています。
労働基準法に違反すると罰則を受けるほか、損害賠償を請求されるリスクや企業名を公表されることによる企業のイメージ低下に繋がるリスクがあります。
③時間外労働の上限規制とは
2019年4月の法改正によって定められた「時間外労働の上限規制」について簡単にご説明いただきました。
2024年問題について
これまで時間外労働の上限規制の適用が猶予されていた「建設事業」「自動車運転の業務」などの業種も、2024年4月1日より時間外労働の上限規制が適用されることになります。
建設事業・運送業に対して時間外労働の上限規制が適用されることによって生じる、いわゆる「2024年問題」にも触れ、長時間労働が発生しやすい業界構造の是正に向けた行政の取り組みなども紹介しました。
法令違反の事例
労働基準法の法令違反となった事例を3つ紹介しました。
「36協定で定めた上限時間を超えて労働させた」などのことから、労働基準監督署からの勧告や指導だけでなく、書類送検や裁判にまで発展した事例をご紹介しました。
企業イメージの低下だけでなく、求職者が応募を踏みとどまり人材確保が難しくなるなどの可能性も考えられるため、「勧告を受けるだけ」と軽く捉えずにしっかりと法令を遵守しておくことが大切です。
④働き方改革の事例紹介
実際に企業で行われた「働き方改革」の4つの事例を紹介しました。
①【宿泊業】
業務ローテーション、労働時間削減の意識化を図ることで残業時間を削減した事例
②【従業員数90名の飲食業】
非正規雇用労働者の能力管理により正社員の残業を削減した事例
③【運送業】
ドライバーの待遇を改善することにより人材不足を解消した事例
④【運送業】
燃油サーチャージを導入することで経営状況を安定させた事例
⑤質疑応答
今回のセミナーに先駆けて募集したお悩みに回答させていただきました。
質問(1) 繁忙期になると時間外労働の上限時間を超えてしまう月が出てきてしまいますが、どうすればよいでしょうか? 【職種:軽作業、医療・介護・保育】 回答 変形労働時間制を導入することで、繁忙時の時間外労働を抑制することができます。 ◼ 季節による繁忙が激しい ⇒1年単位の変形労働時間制度を適用することにより、繁忙期における月の法定労働時間を延長 ◼ 月内で繁忙がある(固定のシフトが必要) ⇒1ヶ月単位の変形労働時間制度を適用することにより、繁忙日の法定労働時間を延長 ◼ 月内で繁忙がある(始業・終業時刻を本人に任せることができる) ⇒フレックスタイム制を適用することで、月内で本人が法定労働時間内で働く時間を調整 |
質問(2) 時間外労働の上限規制に対応するために準備すべきことはありますか? 【職種:レジャー・アミューズメント】 回答 適正に労働時間を把握したうえで、労働時間制度の見直し・働き方の見直し・人材採用等を行うことによって、上限規制を超えない体制を構築する必要があります。 (時間外労働が発生することが見込まれる場合は36協定の締結・届出を行う必要があります。) |
質問(3) 時間外労働の上限規制については、労働基準監督署の監督指導が厳しくなるということでしょうか? 【職種:軽作業】 回答 働き方改革関連法の施行前は「厚生労働大臣の告示」によって行政指導にとどまっていましたが、時間外労働の上限時間が「法令」で定められたことにより、違反すると罰則が伴うものとなりました。 |
まとめ
今回は働き方改革関連法について、沿革や目的から法令違反事例・対応事例などを交えた働き方改革関連法への取り組み方まで詳しく解説していただきました。
法改正により、これまでは対象外となっていた企業も懲役・罰金に処される可能性があります。
法令を遵守しつつ多様な働き方を選択できる社会の実現に向けて働き方改革を推進していくことが、企業にとっても労働者にとってもメリットにつながります。
本セミナーはアーカイブ動画もご視聴いただけます。ご興味のある方は以下よりご視聴ください。
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