ひと昔前まではアルバイトを採用したいと思えば、選べるほどに求職者がいた時代でした。
しかし今ではブランド認知に成功した一部企業を除き、応募者の確保に毎回苦戦しなければならない現状があります。
企業が選ぶ側から選ばれる側になった採用市場では、「即戦力」の採用を望むだけでなく、可能性のある人を採用し育てていくことも重要です。
今回はそんな「育てる」に焦点を当てて、「メンバーマネジメント」の重要性について解説していきます。
目次
採用の難易度は昔より上がり、これからも改善しない
・生産年齢人口と高齢者
・有効求人倍率の推移
・職種別の有効求人倍率
属性ごとに違うさまざまな退職理由
・高校生に多い離職理由
・大学生に多い離職理由
・主婦(夫)に多い離職理由
・フリーターに多い離職理由
・シニアに多い離職理由
人を育て、チーム力を発揮させるためのマネジメントとは
・「1対1」ではなく「2対1」を組んでマネジメントをする
・教育担当の選び方
まとめ
採用の難易度は昔より上がり、これからも改善しない
まずは現在の採用市場を確認していきましょう。
今回は「人口減少」と「有効求人倍率」に分けてご説明します。
生産年齢人口と高齢者
以下のグラフは年齢別人口の推移を表しています。*1
2010年以降では明らかに総人口が減少しており、少子高齢化等の社会課題を踏まえると今後も回復の見通しは立ちません。
さらに生産年齢人口とされる15歳〜64歳は2021年時点で全体の59.4%、65歳以降の高齢者は全体の28.9%を占めています。
これが2060年には15〜64歳(51.4%)、65歳以上(38.4%)になると推計されています。

有効求人倍率の推移
以下のグラフは平成22年(2010年)から令和5年(2023年)までの有効求人倍率の推移を表しています。*2
人口減少の影響もあり、有効求人倍率は年々上昇していることが分かります。
有効求人倍率が1倍を超えると、求人数が求職者数を上回っていることを意味するので、採用活動の難易度も高くなります。

*2:引用)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年4月分)について」
職種別の有効求人倍率
有効求人倍率は職種によって大きくばらつきがあるものの、多くの職種は有効求人倍率が2〜3倍ほどに達しており、採用活動は苦戦を強いられています。*3

*3:引用)株式会社マイナビ「2023年4月度 労働市場レポート」P.10
属性ごとに違うさまざまな退職理由
生産年齢人口推移と有効求人倍率からわかる通り、いつでも望んだ時にアルバイトを採用できるという考え方にはリスクがあります。
一筋縄ではいかない現在の採用市場で人手不足に陥らないためには、アルバイトが早期離職してしまい、また新規採用を行うという悪循環を防ぐ必要があります。
マイナビバイトでは、早期離職に至った理由を属性別に調査しました。
離職理由を把握し、職場環境の見直しを行うなど早期離職を防ぐための対策を行いましょう。
高校生に多いアルバイトの離職理由 *4
・「上司/先輩から理不尽な指摘や指導があった」34.4%
・「シフトや休みが希望通りにならないことが多かった」29.5%
・「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」28.4%
・「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」27.9%

*4:株式会社マイナビ「高校生のアルバイト調査(2023年)」p.60
大学生に多い離職理由 *5
・「上司/先輩から理不尽な指摘や指導があった」30.6%
・「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」26.4%
・「想定よりも仕事がきつかった」24.7%
・「想定していた仕事内容ではなかった」23.3%

*5:株式会社マイナビ「大学生のアルバイト調査(2023年)」p.58
主婦(夫)に多い離職理由 *6
・「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」40.5%
・「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」33.4%
・「想定よりも仕事がきつかった」30.5%
・「上司/先輩から理不尽な指摘や指導があった」26.4%

*6:株式会社マイナビ「主婦のアルバイト調査(2023年)」p.58
フリーターに多い離職理由 *7
・「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」40.2%
・「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」33.8%
・「想定よりも仕事がきつかった」33.5%
・「働き始めたばかりの際、受け入れ態勢やサポートが不十分だった」32.1%

7:株式会社マイナビ「フリーターのアルバイト調査(2022年)」p.46
シニア多い離職理由 *8
・「職場の雰囲気が良くなかった/自分に合わなかった」41.7%
・「上司/同僚など職場の人間関係が合わなかった」30.6%
・「想定よりも仕事がきつかった」29.2%
・「上司/先輩から理不尽な指摘や指導があった」24.3%

*8:株式会社マイナビ「ミドルシニア・シニア層のアルバイト調査(2023年)」p.52
早期離職の要因は属性によって少しずつ違いがあるものの「職場の雰囲気が良くなかった」「上司や同僚と合わなかった」などの職場内の人間関係に関わる理由が多く見られます。
それらを解決して定着率の高い職場をつくるためには、年齢や性別・働く目的など価値観の違う人たちをまとめていくマネジメント能力が必要となります。
人を育て、チーム力を発揮させるためのマネジメントとは
「1対1」ではなく「2対1」を組んでマネジメントをする
指導者1人が個別に全ての指導・対応を行うには多くの時間を費やす必要があり、指導者本人の業務にまで影響を及ぼす可能性があります。
そこで多くのアルバイトを育成していくためには上司(先輩)1人 対 アルバイト1人の1対1ではなく、教育担当の先輩従業員を選定し、上司・先輩 2人 対 アルバイト 1人で2対1の体制を作ることがおすすめです。
例えば振り返り面談を行う際には先輩従業員にも同席してもらい、具体的な行動計画や納得できていない部分をお互いに確認し合います。注意などを行う場合も同様です。
2対1の体制を作ることでアルバイトを孤立させず、指示や教育を受け止めてもらいやすくなります。
また指導内容を監視し合うことができ、無意識的なモラハラなどを防ぐことにも繋がります。
先輩従業員にとっても「自分がお手本になっている」という意識が働き、より業務や後輩育成に力を入れてくれるなど相乗効果も期待できます。
教育担当の選び方
まず、お店や会社のことを一緒に考え、協働できる人材を教育担当者に指名することが重要です。
次に、教育担当者と事前に新人アルバイトの育成計画や価値観を共有し、教育担当者から共感を得られるか確かめていきましょう。
価値観のすれ違いから責任者(店長)と教育担当者が異なる指示を出してしまうと、新人アルバイトが混乱し、結果的に早期離職につながる可能性があります。
そのため教育担当者を選ぶ際に重視したいのは「価値観が合うか・尊重し合えるか」という点になります。
協力し合い、目標設定やフィードバック面談などを行いながら、ともに歩んでいける教育担当者をを指名することが大切になります。
まとめ
アルバイト採用の難易度は年々上がり、回復の兆しが見えない時代だからこそ、採用できた人材の離職を防ぎ、育成できる体制をしっかり整えることが大切です。属性ごとに離職理由やアルバイトに求めていることは異なります。
すべてに対応することは難しいかもしれませんが、意識することでより良い環境づくりに繋がるでしょう。
ぜひ記事内の資料やマネジメント方法を参考に、離職防止のための取り組みを進めてみてください。
記事公開日:2023年7月20日